第13回 脳と胃

何と1年と1か月ぶりのブログ更新です。一年は早いようでやはりそれなりの時間を重ね、世の中は変わらぬようでも変わっております。何と言ってもこのブログ、タイトルに平成という年号をつけております。こんなに早く平成が終わるかも、という事態になるとは…

第12回 胃袋

ご無沙汰したしました。新年の場面から始まる「食道楽」に合わせ、ちょうどこのブログも新しい年を迎えたところ、受験、卒業入学シーズンを超えて、一気に春となってしまいました。春爛漫、気分も一新して、また再開です。 場面はちょうど大原がお目当てのお…

第11回 門違い(かどちがい)

***************************************手料理を人にふるまうものは先方の胃袋が耐えられるか否かは関心なく、多く食べられることを快く思うという癖がある。主人の中川は自慢顔に言った。「大原君、その四角な大…

第10回 豚の刺身

***************************************客の大原は腹中に新たに食べ物を入れる余地はなかったが心に期するところがあったので無理に端を執り「なるほど、この汁は美味い、いろいろな野菜も交じっているけどこの豚…

第9回 豚料理

新しい年ももう半月以上過ぎてしまいましたが、新年の場面からから始まる『食道楽』。ちょうど時期もあっているので、頑張って追いかけていきたいと思います。 本年もよろしくお願いいたします。 ****************************…

第8回 料理自慢

新聞小説を追いかけて、毎日とは言わなくても隔日位で更新しようと思っていたのに、あれこれ忙しくしているうちにひと月たってしまいました。重い腰を上げようやく着手し、ほぼ書き上げた第8回。完成寸前に消えてしまいました。なぜ?と叫んでも戻ってこな…

第7回 大食家

*************************************** 中川と呼ばれているのは2年ほど前に大学を卒業し、今はある文学雑誌の編集に従事している人物だ。下宿住まいも不自由だということで去年新たに家を借り、下女を雇って世帯…

第6回 友人の妹

*************************************** 事情に駆られて婚礼を急ぐ人ほど不幸な者はいないだろう。しかしながら今の世に中にはこういうことを聞く人もそのような事情を不思議には思わないようだ。奥さんは客の心を…

第5回 嫁捜し(よめさがし)

新聞小説を追いかけるブログに休日はない!の意気込みでしたが、2,3日開いてしまいましたね。気を取り直して、続けます。*************************************** 珍しい御馳走に客はおなかが膨れ、もうたくさん…

第4回 南京豆

*************************************** 台所といえば黒くくすぶってむさくるしいように聞こえるが、この家の台所は奥さんが自慢顔に客を連れ込むほどのことはあって、へいぜいからきれい好きなのであろうと思われ…

第3回 酔醒め

*************************************** 「モシモシ大原さん、たいそうおうなされですね。どうなさいました、怖い夢をご覧になりましたか。モーお目覚めなさいまし」と年若い奥さんが年賀の客で、年のころ32,3…

第2回 酒の洪水

************************************** 人は気楽なもの、腹の中でこんな恐慌を起こすとも知らず、へいぜい胃吉や腸蔵を酷使することに馴れてしまう。遠慮会釈もなく上の方よりドシドシと食べ物を腹の中に詰め込んで…

第1回 腹中の新年

今日から「食道楽・春の巻」本編に入ります。 『食道楽』は明治36年(1903)1月から12月まで、当時の家庭向け新聞の雄「報知新聞」に新聞小説として連載されたものです。ですから、一話ごとの分量も少なく、その少ない紙幅にこれでもかというくらい…

平成・食道楽 ~今日も美味しうございました~ はじめに

明治36年の大ベストセラー、村井弦斎著「食道楽」。 全編に630種もの料理レシピを盛り込んだこの作品は単に美食、食通小説というものではないようです。食を通して生活全般の改善を目指し、文明社会に生きる近代的人間としていかに生きるべきか、という…